野菜をしっかり食べられていますか?
そう質問されても「しっかり食べるってどのくらいなのだろう」と疑問に思われるかもしれません。
もしくは、ランチで外食をすればサラダも出てくるし、ちゃんと野菜くらい食べていると思っている方もいるのではないでしょうか。
実はそのくらいの摂取量では野菜は足りていないかもしれません。
皆さんの日頃の野菜摂取量は足りているのか、また足りていないとしたらどんな問題があるのか。見ていきましょう。
もくじ
野菜はどのくらい食べたらいいの?
厚生労働省が公表している「健康日本21(第二次)」で、野菜の摂取目標量は1日350グラムとされています。
参考:栄養・食生活に関する生活習慣及び社会環境の改善に関する目標
(健康日本21)
実はこの数値は「健康日本21」が開始した時にも同じ目標が掲げられていました。しかし改善が見られなかったため、第二次においても引き続き同じ数値が目標値にされているのです。
さて1日350グラム食べたいということでしたが、実際はどのくらい食べているのかといえば、平成26年の国民健康・栄養調査の結果を見ると摂取量は平均で292.3グラム。
今年度の国民健康・栄養調査の結果は?
(厚生労働省のページで確認)
20歳以上の男女、各年代で350グラムを超えている年代はありません。特に20代・30代・40代・50代の各年代は男女とも300グラムを下回る摂取量の低さです。
このような低空飛行はここ10年間でも大差なく見られる傾向です。この野菜不足はさまざまな問題を引き起こしています。
野菜不足になると
野菜から摂取が期待できる栄養素といえば、ビタミン・ミネラル・食物繊維です。ミネラルと言っても、日本人が過剰摂取気味のナトリウムは少なく、ナトリウムと拮抗して働くカリウムは豊富ですから、余分なナトリウムの排泄にも役立ちます。
ナトリウムの摂り過ぎは高血圧を招きます。高血圧はあらゆる生活習慣病のリスク要因といっても過言ではないでしょう。そのため、減塩対策だけでは不十分で、カリウムの摂取が必要であると考えられています。
また1日350グラム、複数の種類を取り入れながら野菜を食べていると、食物繊維は「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で目標量とされている男性20グラム以上・女性18グラム以上(いずれも18歳から69歳の目標量)をおおむね摂取できるとされています。
ビタミンやミネラルはいずれも必要な量は微量でありながら、身体の調子を整えるうえでは欠かせないものです。多くは身体で合成することができず食べ物から摂取する必要がありますが、野菜はその重要な給源なのです。
「健康日本21」では、野菜の摂取量増加にとって、体重コントロールに重要な役割があるとしています。さらに循環器疾患や2型糖尿病の一次予防に効果があるという報告をふまえて、野菜摂取量の増加を目指し、1日350グラムという摂取量を目標にしています。
野菜ジュースで野菜不足は解消できるのか?
なぜ野菜不足になるかという理由の一つに、1人暮らしや少人数世帯だと野菜を買っても調理しきれないという問題点があります。野菜を摂った方が良いことは知っているけれど野菜を食べることができないので、野菜ジュースを飲んでいますという方をよくみかけます。
野菜ジュースと言っても、ペットボトルや紙パックに入って売られているものもあれば、駅などのジューススタンドで売られているものもあり、また健康のためにご自身でスムージーを作っていますという方も最近は増えました。
これらすべてをひとくくりにして「野菜ジュース」と表現するのは少々乱暴かもしれません。
野菜から摂取が期待できる栄養素のうち、とくにビタミンは調理損失が大きい栄養素です。熱や光の影響や空気に触れるなどによって減少してしまうのです。
ペットボトルや紙パックに入っている野菜ジュースの類は、多くの場合、製造工程や殺菌工程で多くのビタミンが損失していると考えられます。また飲みやすくするために甘みを加えているものもあることに注意が必要です。
ジューススタンドで売られているものも、ミキサーの中で何度も攪拌されミキサーの摩擦熱が入っている、長時間空気に触れていた、ということであれば損失は免れないでしょう。
スムージーで野菜不足は解消できるのか?
それらと比較するとご自身で作ったスムージーをすぐに召し上がっているということであれば、ビタミンの損失は比較的抑えられているでしょう。
必要以上に甘みや乳製品などを加えていないか注意しながらも野菜の一つの楽しみ方として取り入れていただくのも良いと思います。
このほかに最近よく見かけるのが、粉末タイプの野菜。パウダー状になっているので、ジュースとして利用できるほか、お菓子やパンの生地に混ぜ込んだり、お料理に活用したりといろいろ活用できて、野菜不足解消にも役に立つのでは? と期待しますよね。
このようなバウダー類は、おそらく噴霧乾燥のように短時間で乾燥して栄養損失に配慮されているものが多いと思われます。
野菜の多くは水分ですから、水分以外の栄養素がぎゅっと濃縮されるようなイメージでしょうか。
熱も入りますし、水とともに損失する分も多少はあると思いますので、水溶性ビタミンやカリウムなどについては、メーカー各社が出している栄養成分表示を確認しながら取り入れてみるのも、一つの手段ではないかと思います。
実際には、野菜に含まれていると期待されている機能性成分については、全種類とその含有量が明確になっているわけではありません。
乾燥させることによってそれらのどれだけが損失してしまうのかは計り知れないところがあり、もちろん生野菜の摂取と同等とは言い難いのですが、野菜不足解消の手段をお探しの方には、決して無駄ではない手段だとお伝えできます。
青汁で野菜不足は解消できるのか?
野菜不足解消の健康食品といえば青汁です。ひと昔前はケールの青汁が主流でしたが、最近では日頃あまり口にする機会がない、大麦若葉や桑の葉などいろいろな素材で作られたものなど数多く発売されています。
ケールに期待できる健康効果
ケールはビタミン・ミネラル・食物繊維を種類も量も豊富に含んだ野菜です。
青汁に加工する際に水溶性ビタミンやカリウムは損失してしまうのではないかと懸念される部分はありますが、脂溶性ビタミンであるβ-カロテンやビタミンEも豊富ですから、粘膜の保護や血行改善といったそれぞれの栄養素が持つ作用に加え、抗酸化作用による過酸化脂質の抑制効果も期待できるでしょう。
食物繊維では不溶性食物繊維も含まれますので、加工後もある程度残存することが期待できます。
大麦若葉に期待できる健康効果
大麦若葉が得意なのは、カリウム、マグネシウムなどのミネラル類、β-カロテンやビタミンCなどのビタミン類の補給です。
青汁を飲もうと考えるときに真っ先に期待する、不足しがちな栄養素を補って栄養バランスを整えたいという欲求を満たしてくれます。
さらにはSOD酵素という細胞の新陳代謝を活性化させてくれる成分が含まれていますので、健康増進効果が期待できます。
桑の葉に期待できる健康効果
DNJという、桑の葉特有の成分を含んでいます。期待される働きは糖の吸収抑制。血糖値上昇を抑えてくれます。
血糖値の急激な上下は血管に負担をかけることで循環器系の疾患リスクが懸念されますし、もちろん糖尿病も心配。血糖値の上昇を防ぐということは、多くの生活習慣病対策に、うれしい働きなのです。
青汁が野菜不足を解消してくれる訳ではないけれど
青汁の多くはフリーズドライで作られていて栄養損失には気を使われていると思われます。
野菜ジュースよりもやや口当たりの悪いところも「良薬口に苦し」と思って我慢できるのでしょうか。青汁人気は廃れることなく継続しているように見受けられます。
野菜不足の方が青汁を飲むことに関しては、栄養士のなかでも賛否両論と言えます。
コレといった正解は無いように思うので、私個人の意見を述べさせていただくと、「飲まないよりは飲んだ方が良い」けれども「飲んで野菜が足りてる気になるのはキケン」ということでしょうか。
野菜不足を、野菜摂取以外でカバーするのはなかなか難しいと言えるでしょう。
けれど青汁さえも摂取しなければ深刻な野菜不足は一向に改善の兆しが見られません。それだったら、全く摂らないよりも青汁を飲んでおいた方がいくらか足りない栄養素の足しにはなるのではないかな、と思います。
噛むことを忘れないで
野菜ジュースや青汁で野菜不足を補っている方も少なくないものの、栄養士の中にはあまり奨励できないという考え方があります。
私も「全く食べないくらいなら、野菜ジュースでも青汁でもいいからまずは摂ることから始めてほしい」とは思うものの、野菜ジュース賛成!青汁賛成!と、もろ手を挙げては言えません。
それは栄養摂取量ということのみならず、「食べる」という行為にも大切な役割があるからです。
きちんとある程度のかたさのものを「噛んで」、あごを動かすことはとても大切なことです。野菜ジュースや青汁をただ飲むだけでは得られない効果です。
またビタミンやミネラルはサプリメントも充実しているので、野菜不足をサプリメントで補おうとなさる方もいらっしゃいます。こちらはあまりオススメできません。
なぜならビタミンやミネラルの中には摂り過ぎの害である過剰症が知られているものもあるからです。
通常食事からの摂取では過剰症は起こりにくいのですが、サプリメントのような形で特定のものだけを高濃度で摂取した場合に過剰症は起こりやすくなります。
「マルチビタミン」「マルチミネラル」と複数のものが入っている製品を摂っていると、気づかぬうちに重複していて過剰になってしまうこともあるので、注意が必要なのです。
噛むことはあごの衰えを防ぎますし、脳を活性化させます。口腔機能の維持には欠かせない行為です。加えて、満腹感を得られるという働きもありますので、食べ過ぎを防ぐこともできます。
野菜ジュールや青汁は、時には楽しみ、時には応急処置といった具合に、野菜不足を補う一つの手段として活用していただきたいと思います。
基本は毎日のお食事でできるだけ野菜を取り入れることをぜひ目指してください。
野菜摂取量と健康に関するデータ
野菜摂取の増加が健康に寄与するということは、多くの疫学研究でも発表されています。疫学研究とは健康なヒトを対象にした研究で、集団の健康に関する事象の頻度や分布、影響を与える要因を明らかにするための研究です。
実際に多くのヒトを対象に、長い期間かけて研究された結果ですので、日本においても「日本人の食事摂取基準」や「健康日本21」、その他の学会の疾患ガイドラインにも活かされています。
例えばWHOの出したレポートによれば野菜の摂取によって肥満や虚血性心疾患のリスクが低下することが示されていますし、世界がん研究基金の報告書では消化器系がんの予防に野菜が有効であることが示されています。
野菜がなんとなく身体に良いことは皆さんもご存知だと思いますが、「なんとなく」ではなく「明確に」健康に寄与してくれるのです。
野菜を食べ増やすコツ
国民健康・栄養調査の結果を見ると、だいたい皆さん、日頃のお食事だと小鉢一つ分くらいの野菜が足りていないことがわかります。
「野菜を食べ増やさなくては」と思っても、野菜を買ってきて作るようにするのはちょっとハードルが高いかもしれませんが、定食屋さんでいつもの食事に小鉢一つ追加してみるくらいのことであれば、あまり難しくないと思われるのではないでしょうか。
毎日のお食事でプラス50~70グラムの野菜ということであれば、冷凍野菜も上手に活用してみてください。
冷凍野菜は栄養損失が大きいように思われがちですが、旬の栄養がのっている時期に大量に処理していることが多く、わずかに火を通すだけで急速冷凍をかけていますので、旬でない時期の生野菜を買ってきて無理に調理するよりも栄養価が高いこともあります。
生野菜を買ってきても処理に困るということであれば、冷凍ホウレンソウを卵焼きに混ぜるといった使い方の方が、楽に野菜を食べ増やすことができるのではないでしょうか。
コンビニエンスストアの利用率が高い方は、コンビニのサラダはどうだろうとお考えになると思います。
ビタミンの損失を考えるとあまり期待はできないかもしれませんが、食物繊維の摂取には有効です。また最近では生野菜が売られていることもありますので、調理を必要としないプチトマトをちょっとプラスしてみてはいかがでしょうか。
お弁当を選ぶ際にも、メインのおかずばかりではなく野菜はどれくらい入っているかに注目していただき、足りていないようであれば副菜を足して補ってみてください。
野菜不足解消まとめ
子どもの野菜不足は野菜嫌いが問題でした。でも最近の野菜は食べやすく改良されているものも多く、またさまざまな工夫や食べる楽しみから、進んで野菜を食べる子どもも多くなりました。
一方で野菜嫌いのままで大人になってしまったパパママ世代の野菜不足は改善が見られていない様子です。
[fukidasi title=”” color=”black” back_color=”pink” avatar=”https://kondateclub.com/wp-content/uploads/2016/05/kannrieisyousi-shita-150×150.jpg” alt=”kannrieisyousi-shita” width=”150″ height=”150″ lr=”r” name=”管理栄養士のチカさん” type=”tate”]給食のある子どもと違って、嫌いなら食べずに過ごせてしまうのも問題です。
ただし野菜不足から引き起こされる生活習慣病を考えれば、パパママ世代の野菜不足の方が深刻です。[/fukidasi]
野菜不足の解消には、そんなに大きな決断は必要ありません。ちょっと一品追加するだけ。気軽な気持ちで一品追加を習慣化させていただき、野菜不足解消に動いてみてください。
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